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読み始めたら止まらない ! 大河解説ロマン ガラスの改稿 狼少女ジェーン 11 『イサドラ!』の楽屋編 |
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〜ガラスのように もろく壊れやすいシナリオ ひとはみな素顔を隠して それをえがく〜 |
第11章 紫の影 12 狼少女ジェーン 11 『イサドラ !』の楽屋編 |
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2006/04/12 up
あらすじ
狼のジェーンと人間のジェーンの心の演じ分けが出来ない事を悩むマヤは単身山へ・・・ ろくに装備や食料の用意もなく、深い山中でのサバイバル生活に身を投じた。
マヤは、夜空の星を眺めつつふとプラネタリウムでの速水真澄との会話を思い出す。 おりしも、消灯後の大都芸能本社ビル社長室では暗闇の中、窓辺に立つ真澄が “見えない星”に想いを巡らせているところへ不意に水城冴子が現れた。
果たしてマヤは野生の狼の表情をつかむことが出来るのか・・・ !? 速水真澄の想いとは・・・ !? また、水城冴子の秘めた私情とは・・・!?
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花とゆめ1985年13号(連載第211回) はカラー扉です。 コミックス 31巻 131pの雨月会館で3日間経過したマヤの事を心配する役者たちの場面から 始まります。 ここから実の着いた木の枝もろとも落ちる場面、リスの木の実を強奪するマヤのサバイバル 場面や崖から滑り落ちる場面、泉の水面に映るジェーンの表情をつかんだ場面、夜通し歩いて 下山する行程、夜明けのヒッチハイク、などの凄まじいマヤの姿を経て、雨月会館に戻ってきて 元気に「ただいまあ・・・ !」というところ(153p)までは変更なしです。
なんと4日間もの山中サバイバルをわずかな食料でしのいだわけですね ・・・(^_^;)
コミックス154pにあたる次のページの最後のコマから変更があります。
大都劇場 外観 夜景 『イサドラ !』の看板がかかっている 154-1
『イサドラ!』 看板のアップ 154-2
[本日初日]の立て札 154-3 入り口の観客たち わい わい
観音開きのドア 上部に[A楽屋]のプレートが貼ってある シャンデリアの絵に差し替え 「円城寺さん すごい人気ですよ !」 (人物描写はなし) 「客席は超満員ですよ」 「それも今日はすごい顔ぶれです !」 ──────────────────────────────────────── 右隅に語っている男 横に衣装係の女性 手前に化粧しつつそれを聞く微笑のまどか まどかの後ろからその後ろ髪を整えているヘアメイクの女性 背後に花輪など 「芸術祭の実行委員会のメンバーが全員と」 「主催のフジ食品工業の社長に会長に 全日本演劇協会からは理事長に会長」 「それに大和だいわ映画に角田映画の社長」 「宝竹と東活映画の専務に部長も来てますよ !」 「その他協会員である役者や演出家 舞台関係者が一杯です !」 「新聞社や雑誌社もかなり集まってます !」
紫煙をたなびかせた藤本 「さすが星歌劇団の大スターだった円城寺まどかだ」 「招待客はほとんど集まったというわけか」 「これでアカデミー芸術祭はきみのものだよ まどか君」 「それに全日本演劇大賞もな」
楽屋の一角に置かれた花 の群れ (見える範囲で10種類程) 「全日本演劇協会賞は劇場に集まる演劇協会員達の数で決まると言ってもいい」 「客席数二千席のこの大都劇場」 「21日間の公演」 「マスコミもこぞって注目しているこの舞台」 「すべての賞は文句なくきみのものだな」 このページは155pのロビーの様子に描き替え ──────────────────────────────────────── 鏡に写る藤本の立ち姿 手前に同じく鏡に写る 化粧中の不敵な微笑みのまどか 「ところで黒沼君たちに初日の招待状を送ったんだって?」 「ええ どうせ来やしないでしょうけれど」 「差を思い知らせてあげるのも情けかと思って」
後ろ手に髪を束ねるまどかの後姿 その後方に藤本 やや俯瞰 「演劇協会賞は強力なライバルがいましてよ」 ホホホ 「ばかばかしい 冗談はやめたまえ」
空白コマ 「雨月会館なんていう あんなちっぽけな劇場にどれだけの人間がはいるというんだね」 あはは 「この大都劇場の二千席にかなうわけはないじゃないか」 ホホホ 「まして相手は芸術祭に参加もできなかった芝居じゃないか」 「あまりからかうのもかわいそうだよ」
劇場ロビーの様子 笑い交わす人々と花輪 二階席 シャンデリア ガヤ ガヤ ガヤ ──────────────────────────────────────── 右手前にうれしげな女性客二名 奥に亜弓と歌子 その後方に俳優男女 右奥には観客たち 同じコマの左手前に亜弓のすました表情のアップ このアップのみ157p-2 に採用 「みて・・・! 姫川亜弓よ !」 「女優の姫川歌子と一緒だわ」 (服とアクセサリーは描き替え) 「きゃー! あれ『太陽に泣け !』の刑事役の人よ────!」
汗一滴カメラマンと ハンチング帽の記者 ふと・・・ 156p-1にコマの幅を縮小して採用 「さすがに今日の初日はすごいな」 「なにしろ芸術祭の大賞候補だからな」 「関係者と報道陣で一杯だ」 「おい・・・!」 ふと・・・ と「おい・・・!」を抜いて採用
すました真澄とうつむき加減の紫織 ややアップ 背景には放射線 「大都芸能の速水真澄がうわさの女性と一緒だ・・・ !」 「あれが鷹宮天皇の孫娘紫織様か・・・ !」 「うわさ以上の美人だな」
157p-4の真澄と紫織は二人とも笑顔に描き替えています。(連載時原稿の紫織はつつましやか) 記者のセリフも「紫織さん」と言っており、やや違いますがコミックスの方が適切でしょう ──────────────────────────────────────── ハンチング帽の記者 158p-1の記者とカメラマンは描き替え 「公の席へ同伴するなんて婚約の噂もどうやら本当らしいぜ」 →「・・・こりゃあ婚約もまじかだぜ」
奥に小野寺 右手前に真澄 とおじぎする紫織 158p-2とは位置関係が逆 「やあ 真澄君」 → 「真澄くん !」 「小野寺先生」 → 「小野寺先生」 「紹介します こちらは・・・」 → 「ほう その人かね堅物のきみの 「鷹宮紫織と申します」 心を動かした女性ひとというのは」
空白コマ 「これはお美しい・・・ !」 → 「紹介します こちらは・・・」 「真澄君も人が悪い こんな美人を隠しているとは・・・ !」 → 「鷹宮家のご令嬢紫織さまですな」 ははは → 「いや噂以上にお美しい !」 「ま!」 「いいえ・・・」 → 「こりゃあどんな女性も真澄くんの 目にはいらんわけだ」 劇場の大扉(観音開き) {ただいま開演5分前です} 「さ! 舞台が始まります 中へ・・・」
ザワザワ 158p-4 書き文字と記号は描き替え ふと・・・ 振り返る真澄
周囲に招待客たち 奥中央に女性一人と男性二人のシルエット 158p-5,6とは違う絵 「おい 黒沼龍三だぜ」 「円城寺まどかのために大沢事務所を追い出されたっていう・・・」 ザワ 「招待されてたんだって この舞台に・・・ !?」 「あきれた・・・! よく来たものね」 ──────────────────────────────────────── 真っ黒バックに マヤ 頬汗の横顔 大アップ 「あの子が黒沼龍三の今度の芝居の主役か・・・」 「さえない少女だな」 「え!? 『紅天女』候補・・・・・・ !?」
左から 黒沼 マヤ サクラコージ の順で 斜め後方から全身を捉えた構図 もやもや背景 ザワ ザワ ザワ ──────────────────────────────────────── 亜弓 ややびっくり目 ややアップ 放射背景 「マヤちゃん・・・」 この呼び方は?・・・(^_^;)
小野寺 ふと・・・ 「ほう・・・!」
奥にびっくり藤本 手前に青筋頬汗額汗の大沢社長 「黒沼龍三・・・・・・・・・」 「あわわ」
ハンチング帽の記者と 汗一滴カメラマン 「おい・・・ なんかおきるぜこりゃあ・・・」
劇場の大扉前に立つ真澄 アップ 開いたドアの中は暗闇 目前に八方放射の星
柱言葉 野生の表情を獲得した、マヤ !! 紅天女への最後のチャンス、 “全日本演劇協会賞”を目指せ !! ・・・でした。
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13号
← ミが抜けてる
← 手書き文字
← 手書き文字
← 手書き文字
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 157pから159pにかけての絵は注釈があるものも含めてその大半が描き替えになっています。 連載時原稿もコミックスもセリフの流れはよく似ていますが、画面の印象は大幅に変わっています。 コマ割りの構成を変えているので、全体のバランスをとる必要もあったと思いますが、ほとんどの 絵が描き替えられたのは、他に意図がありそうです。
楽屋でまどかに来客の様子を報告する男性スタッフの発言は全てカットされましたが、その代わり にコミックス31巻156p-3 には“姫川亜弓の活躍編”で一旦カットされた全日本演劇協会の理事長 と会長の姿が新たに描き加えられています。
また、演劇関係者(宇田川千吉氏など)や主催者のフジミ食品社長が来ている事を示すコマが 数コマ加筆されていますが、これは、上記セリフのカット部分の補完に加え、真澄のマヤへの挑発 によって、「忘れられた荒野」を売り込むという、この後のストーリーの流れを補強する目的で演劇 協会賞の審査に関係する人物を加筆して、アカデミー芸術祭参加への筋立てを増強したということ でしょう。
楽屋での化粧シーンのまどかは、大スターにふさわしい美人に描かれています。 芸能界編の乙部のりえが読者にはじめて素顔を見せたときと同じく、マヤのライバルとしての インパクトを強める描写になっています。 また、藤本と黒沼の確執部分をカットしたせいか、藤本のセリフはほとんどがカットされました。
このあたりを考慮すると、マヤのライバルとしてのまどかと、黒沼のライバルとしての藤本の 演技、演出の上での対決色を薄めることがこの号の改稿の目的だったのではないでしょうか。
ずっと後のことになりますが、アカデミー芸術祭の発表でまどかとマヤの対決が重みの感じられ ない勝負になった遠因はここにもありました。
しかし、乙部のりえにしろ、円城寺まどかにしろ、マヤのライバルとして、その凄みを見せるのは 初めのうちだけであって、ストーリーの進行とともに徐々にキャラクターとしてのウエイトが下がって 行き、最後は一山いくらの雑魚キャラになるので、単に連続ドラマのひとつのエピソードの中での 盛り上がりを演出しているに過ぎませんが・・・(^_^;)
まあ、これは連載時原稿では各回の中で起承転結をつけて、なおかつ次回購読を誘引する為の “引き”を作ろうとする商業出版物では仕方のないことかも知れませんね・・・(^_^;)
この号ラストの場面はコミックス159pでは真澄がマヤに対して挑発的な発言でファーストコンタクト を果たしますが連載時原稿の流れでは離れたところから眺めているだけです。
これはコミックス31巻冒頭の真澄と水城冴子の会話場面での設定変更により、黒沼と大沢社長、 及び藤本との確執によるストーリーの停滞を単純化して、さらに21p〜の場面で描かれた真澄の 発言が“姫川亜弓の活躍編”での亜弓によって引き出された理事長の発言(アカデミー芸術祭 参加作品ではなくても演劇協会の最優秀演技賞の対象にはなりうる)をそっくりパクって自分の ものとし、大沢事務所が「忘れられた荒野」製作を打ち切っても、この秋になんらかの形で上演 さえ出来ればマヤの『紅天女』への1%の望みは絶たれていないことを語り、真澄自身が主導 する提案で黒沼たちを『イサドラ !』公演初日に招待した流れに基づく変更でしょう。
この後、雨月会館の修理(28p)、英介との会話で語られたセリフの調整(33p)、真澄と聖の間 で交わされた別荘での会話シーンの1ページの加筆分(46p)、などを経て31巻のクライマックス に『イサドラ!』初日の狼少女VSマタドール真澄の対決という筋立てを持ってきたわけです。
かくて 上演の行方編 の権太原は永久に姿を消し、“ ミルキーウエイ編 の幻”の伝説が生まれ、 姫川亜弓の活躍 は無かった事になり、真澄はますます長期的な視野を持つ、芸能界のドンの 風格を帯びてきたわけです。
しかし、 プラネタリウムデート編 以来の“真実の心”に絡むエピソードは ミルキーウエイ編 および、 速水真澄の陰謀編 で描かれた聖唐人への指示に見られる裏からのマヤへの支援、そして前回 の 野生の狼少女編 での“暗闇の社長室”のエピソードが結局カットされたままですので、読者に 対しても「真澄のマヤへの愛情」の気持ちを表す場面を意識的に伏せたということですね。
全体の流れから枝葉末節を切り捨てることによって、マヤを支援する真澄の「紫のバラのひと」と しての心や、その元となっている“マヤへの愛情”の描写よりはむしろ「ゲジゲジ」としての「冷血 仮面」ぶりをより強調したということでしょう。
聖の 「あなたの中の海は広すぎてぼくにはみえません・・・」 「昔も・・・ 今も・・・」 のセリフ の加筆は真澄の“真実の心”を読者に対しても隠す為だったのでしょうね。
このように、連載時原稿とコミックスの改稿部分を比較することで、徐々に作者の意図や目的が 浮かび上がってきます。
31巻の改稿の真相もかなり明らかになってきましたね。 ♪・・・(^0^)
今回の改稿研究はたったの7ページ分ですが、 狼少女ジェーン 5 上演の行方編 以来の5つの コンテンツで書いてきた改稿を総括するのには重要な回だったと思います。
次のコンテンツは本当はこのページに続けて記述していたのですが、内容に注釈を施すうちに 独立させた方がいいように思いましたので、分割することにしました。
たぶん、次回のUPは早いと思います。
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12/02/22 コンテンツ全体の修正 06/04/13 背景とレイアウトの変更
06/04/29 「 キエカナ」 へのリンク追加 06/05/08 屋台場面の注釈を追記 06/04/12 背景とレイアウトの変更 06/04/06 画像のレイアウト変更 06/04/12 記述の追加とレイアウトの修正 06/05/01 「 キエカナ」 へのリンク追加 06/04/12 レイアウトの変更 06/04/12 新事実の追記二件と全体修正 06/04/17 内部リンクの追加 06/04/14 注釈の追記と情景描写の修正 06/04/17 内部リンクの追加 06/05/01 コンテンツ名変更 06/06/03 若干の注釈追記と微修正 06/06/16 若干の解説・注釈の追記と修正 06/06/16 更新 記述の追記と修正 06/06/16 解説・注釈の追記と記述の修正 06/06/16 解説・注釈の追記と記述の修正
06/08/28 追記と修正 12/01/13 更新 記事の追記 06/06/07 カラーも含む画像2枚 up
新コンテンツ作成ごとに随時更新中 必要に応じて随時加筆 2012/02/21 新規サイトを仲間に追加 (^^) ついに作家デビュー !! 作家デビュー2作目 !! 最新のコンテンツ |